【完全版】靴屋が語る、本質的な「良い靴」の選び方
2024.07.11
「良い靴」を選びたい!
と思ってこの記事に辿り着かれたあなたに、まずは以下のたった2つをお伝えします。
たいていの靴屋は言わないことかもしれませんが、この2つを頭に入れた上で、靴選びのステップをきちんと理解していれば、靴選びでの間違いや失敗はかなり減ります。
① 「この靴は足に良い」と言う謳い文句に惑わされない。
② 足のサイズ計測は必須、でも計測数値にとらわれない。
・・・つまり、どうしたらいいの?
「良い靴」選びの方法を、順を追ってみていきましょう
「良い靴を履くことが大切」
と伝える靴店やメーカーはたくさんあります。
「良い靴を履きましょう」
「靴にはしっかりとお金をかけましょう」
「足腰の健康は一生物だから、妥協せず、良い靴を選びましょう」
・・・そう言われますが、
「良い靴」っていったいなんでしょう?
世の中には「良い靴」について、たくさんの情報があふれています。
「やわらかい靴がいい靴ですよ」
「締め付けが少ないと楽ちんです」
「土踏まずがフィットする靴であれば、足が支えられていいですよ」
「ふかふかのインソールだと足裏への負担が少ないです」
このような謳い文句を耳にしたことはないでしょうか?
「良い靴」の定義は非常に難しいです。
というよりも、定義がないからこそ、難しいと言えます。
靴業界では、「良い靴」が最低限満たすべき仕様や、要件となる基準が定められていません。
だからこそ、「やわらかい」「ふかふか」「土踏まずフィット」など、お客様に簡単に伝わりやすい点ばかりが、「良い靴の条件」として打ち出されるようにもなってきました。
例えば「とにかく足あたりが気持ちいい靴を探しているんです」「扁平足で…」など、特定のお客さんを想定して、ある程度わかりやすく、「これが良い靴です」と言い切ることについては、致し方ない側面もありますが、基本的に、「良い靴とはなにか」は、一概に言えるものではない、ということは頭に入れておいていただきたいと思います。
「あなたにとって」の良い靴選び、には、さらに難しさがあります。
それが、「自分にとって」良い靴なのか、
その靴は「自分が」望む目的にあっているのか、
そういったところまで確認するためには、自分のこと、自分の足について正しく捉え、理解するところから始めないと、判断ができません。
私たち靴屋でも、
お客様がどのような足や身体・歩行の特徴をお持ちで、何を目的にしているかによって、おすすめする靴は変わってきます。同じ仕様の靴であっても、あるお客様にとっては「良い靴」で、別のお客様にとっては「悪い靴」になることもあります。
ご自身の足を正しく把握し、合わせて靴の特徴をおさえることに加えて、履いた時にどう感じる靴が、自分の足や身体にどのような影響があるのか、ということへの経験値も必要。ご自身の足・靴の経験値に、靴をお薦めする販売者側の経験値を掛け合わせて、靴を選び、相談していくことが最も確実であり重要です。
「誰にとっても」「絶対に」「良い靴」などというものは存在しない
これを満たしていれば「絶対に良い靴」と言える、そういう明確な定義がないからこそ、「これも良い靴ですよ」「これが良い靴ですよ」と様々に謳われて、お客様を迷わせている現状があるとも言えます。
靴以外の製品では、明確に規格が設定されているものはたくさんあります。
しかし、靴にはほぼそれがはありません。
JISの定義で、サイズ・ワイズについては記述されていますが、それだけです。
ただ、「良い靴」を一律に規格で定義できない理由も分からなくはありません。
靴の難しさは
・人によって足の特徴は全く異なること
・靴選びにおいては、足の形状やフォルム、部位単体の特徴だけでなく、身体全体のバランスや歩行の影響も受けること
にあります。
それらの差分により、「良い靴」の要件が万人にとって同じとは言えないからです。
「良い靴」を探し出すために
難しさばかりを書いてしまいましたが、あなたの足にとっての「良い靴」は必ずあります。
最初に、これだけは心に留めておいていただきたい、「良い靴」の選び方の大事なポイント2つをおさらいします。
〜おさらい〜 この2点を理解しておけば、大きな失敗はしない!
① 「この靴は足に良い」と言う謳い文句に惑わされない。
② 足のサイズ計測は必須、でも計測数値にとらわれない。
万人にとっての「良い靴」は存在しないということを前提にすれば、分かりやすい「良い靴」に頼ったり、単純なサイズ値だけで靴を安易に選ぶと失敗しやすいということを、ご想像いただけるのではないでしょうか?
分かりやすさのその先、本質的な良い靴選びの方法を、一緒にみていきましょう。
あなたにとっての「良い靴」は?
「良い靴」を選ぶときの基準が、みなさんそれぞれで一致していれば、まだ話はシンプルです。
よくある「良い靴」のポイントには、例えば
✅ 履いていて心地よく感じる
✅ 疲れにくい
などがあります。これらの2つを両立できるのがベストですが、実際にはたった2つの要件を両立させることにすら、難しさがあります。
例えばこんな、「良い靴」と言われる靴Aと靴Bがあるとします。
靴A:履いて心地よく感じる靴
「天使の履き心地」や「ふわふわインソールで疲れない」など、とても心地よさそうに聞こえる靴です。
【具体的にはこんな靴】
・やわらかな革を使っている
・ふかふかのインソールが入っている
・凹凸がしっかりとあり、足のアーチをぐっと支えてくれる
靴B: 足や身体全体、歩行に対して、よい影響がある靴
「歩き方矯正」や「これであなたも美姿勢に」など、身体に良い効果がありそうに聞こえる靴です。
【具体的にはこんな靴】
・形状を保持する硬さがある
・硬めで適度な反発がある
・凹凸が適度で、歩行を阻害しない
靴A、靴Bに挙げた「良い靴」の要素は、どちらもそれぞれもっともらしく聞こえます。しかし、
柔らかい方がいいのか、あるいはある程度の硬さが必要なのか
ふかふかしている方がいいのか、適度に反発する方がいいのか
凹凸がしっかりしているのがいいのか、適度な範囲である方がいいのか
上記のように、すでにAとBで矛盾する要素があります。
「あなたの」足にとって
「あなたの」身体の状態にとって
「あなたが」何を望んでいるか、目的とするか
によって、「良い靴」は違います。
あなたの足や身体の個性や状態、叶えたい目的によって、ベストな対処や靴の選び方は変わってくるのです。
「足や身体のことを考えて選んだはずなのに!」よくある勘違い
よくある勘違いが、
A. 履いて心地よく感じる
= イコール
B. 足や身体全体、歩行に対して、よい影響がある
と思いこまれがちなことです。
履いた時の心地よさに繋がる
・やわらかな革を使っている
・ふかふかのインソールが入っている
・凹凸がしっかりとあり、足のアーチをぐっと支えてくれる
などの特徴。
これらは、お客様も実感として感じ取りやすいですし、足や身体の特定の状態においては、良い働きがあることもあります。
やわらかな革を使っていれば、靴側が足の形に合わせて変形しやすく、靴と接する皮膚などの圧迫が少なく、もちろん痛みも感じないので、足に(心地)良いと感じられる。ふかふかのインソールも同様です。
凹凸があるインソールも、足の大事な機能であるアーチ(土踏まずなど)を、高く持ち上げるので、機能的であるように思える。
しかし、足の機能性においては、足の骨格、骨の位置関係がとても重要だし、足全体の動きがどうであるかを考えなくてはならない。これを少しでも良い方向にサポートするには、靴自体にも一定の硬さがないと、支える力が弱くなってしまいます。
ふかふかインソールも同様で、結局は身体を支えきれずに、だんだん潰れていってしまいます。
これで完璧!? 靴選びの完全ステップ
足の3D計測をします!ということも徐々に広まってきましたが、「計測」という言葉に過剰な信頼が寄せられていると感じることも多いです。
「機械で測ったから、足のサイズが分かった」、「計測したサイズに従って選んだから大丈夫!」
と、お客様だけではなく販売スタッフまで思い込むようなことも起きていて、測ったはずなのに、結局また靴選びに失敗した、、、という話もたくさん聞きます。
足の計測はもちろん大事です。ですが、機械での計測だけでは終わらない、
【靴選びの完全ステップ】をお伝えします👇
①自分の足の情報を把握する
②靴選びの最低限の理屈を知っておく
③フィッティングを本当にわかっている店にいく
④試し履きをしっかりとする&感覚を覚えていく
「完璧にしなきゃ!良い靴なんか手に入らない」、と脅すわけではありませんが、せめてこのステップは、ぜひ頭に入れておいてください。
各ステップについて、解説していきます👇
【靴選びの完全ステップ】①自分の足の情報を把握する
「自分の足のサイズくらい、知っているけれど・・・」
と思われた方、ちょっとお待ちください!
足の計測をしたことはありますか?
足は、長手方向の長さだけでなく、足の幅や指の長さ、重心のかかり方など、たくさんの特徴や個性があります。足や身体のことを考える方には、ぜひ足計測を受けていただきたい。
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- サイズ
- 足幅
- 足囲
- 足底圧
- そこから見える特徴
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これらの数字や外形的な特徴に、靴の仕様の特徴を掛け合わせてカウンセリングしていきます。
足はお客様お一人お一人で、千差万別。同じお客様でも、時間や時期によって、足の状態は驚くほど変わります。
靴の良し悪し・合う合わないは、お客様の足によって異なるので、普段の生活スタイルや足のお悩みをお聞きした上で、計測数値だけではわからない中長期的な足の変化も推測しながら、ご説明・ご提案するのが、機械にはできないシューカウンセラーの仕事です。
「合う」「合わない」は、最後はご自身の感覚も尊重しています。
【靴選びの完全ステップ】②靴選びの最低限の理屈を知っておく
足によってや目的によって、検討すべき要素の優先順位は変わりますが、
日常的に使う靴であれば、ほぼ全てにわたり「良い靴」であると言える共通のチェックポイントはあります。
このあたりのポイントを、ぜひチェックしてみてください。
・踵を触って硬さがあるか
・カウンターが長くあるか
・どこの屈曲がよくて、どこは曲がりにくい・捻じれにくいか
🌟もっと詳しく知りたい方は:
https://ladieskid.jp/archives/2044
そして、足のどこが、靴のどことあっていればよいか。
そういった理屈上の「良い靴」「合う靴」と、ご自身の体感としての「合う」「合わない」を照らし合わせられるようになれば、あなたも靴選びの上級者です。
【靴選びの完全ステップ】③フィッティングを本当にわかっている店にいく
「サイズが合った」、や「履けた」だけではなく、お客様の足の特徴と靴の特徴を両方正しく捉え、お客様のお困りごとや目的に応じて、様々なシチュエーションに合う「良い靴」を探していくことがフィッティングです。特にパンプスのフィッティングは難しいと言われます。
自分の感覚は大事、でも靴の特徴も踏まえ、
対話してしっかりとアドバイスをしてもらうということは大切です。
【靴選びの完全ステップ】④試し履きをしっかりとする&感覚を覚えていく
靴は、座ったまま履いてみるだけでなく、立ったり座ったり、歩いてもみてください。
立ち上がって体重がかかると、足は幅が広がる方向に動きます。
体重のかかり方によって、足も動くので、可動する動き方で試し履きをしっかりすることが必要です。
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計測・ご相談は無料です。ぜひお気軽にシューカウンセラーのいる店舗へいらしてください◯
本質的な、「良い靴選び」の完全ステップを頭に入れて、ぴったりの靴を探しにいこう
普段より手間も時間もかかる靴選びになるかもしれません。
でも、毎日履くものである靴。
きちんと自分の足や身体のことを知り、靴を知り、ぴったりの靴を履くことは、皆さんの生活を豊かにしてくれます。自分の足で、長く健康に歩き続けられることにもつながります。
ぜひ、ジャストフィットの幸せを手に入れてくださいね。
この記事を書いたひと
執筆:小堤 啓史
株式会社キッド 代表取締役/合同会社フェルゼ 代表社員COO
一般社団法人東靴協会理事・講師
日本靴小売商連盟認定シューフィッター/小児靴カウンセラー
少林寺拳法大拳士6段/慶応義塾大学理工学部體育會少林寺拳法部総監督
大手ゲームメーカーにて多数のプロジェクトリーダーを務めた後、家業である靴小売業へ。レディースキッドを起点に小さいサイズ・大きいサイズを重点展開し、大手百貨店への商品供給も行う。2017年には「i/288」パンプスの日本初ショップを開業。2019年には、子供靴の企画・物流会社FERSEを設立。
長年様々な武道を修め、身体の機能を探求、大学拳法部の監督を22年務める。そのノウハウから、身体調整やトレーニング指導を多方面から依頼され、『からだ美調律(R)』のディレクターに就任。
セミナーや学会講演なども行い、靴と身体両面から本質的な身体作りを伝える活動を精力的に行っている。
池袋レディースキッドでも足の計測を無料で承っております。ぜひ一度ご来店ください。
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