サイズ展開が少ないのはなぜ?日本の靴業界の構造的問題
2026.05.26
「自分のサイズがない」
「幅の展開がほとんどない」
「あっても選べるデザインが限られる」──。
靴選びでこんな経験をしたことがある方は、きっと少なくないはずです。
小さいサイズや大きいサイズがない。
サイズがあったと思っても、足幅の選択肢がない。
足が特別小さすぎるわけでも大きすぎるわけでもないのに、なぜかちょうど良いサイズがない。それは、あなたの足が”変わっている”わけではありません。靴業界の製造構造に、その理由があります。
「自分のサイズがない」は、あなたのせいではない
靴のサイズ展開が少ない最大の理由は、靴の製造に「木型」が必要なことにあります。
靴は、木型(きがた)と呼ばれる足の形の立体的な型をもとに作られます。靴のデザインごと、サイズごとに、この木型が必要です。サイズを1cm増やすごとに、また幅(ワイズ)の展開を一つ加えるごとに、新しい木型が必要になります。
木型の製作には相応のコストと時間がかかります。
たとえば、同じデザインで24.0cmを作るのと、21.0cmを作るのとでは、別の木型が必要です。さらに幅(ワイズ)をA・B・C・D・E・EE・EEEと展開しようとすれば、同じデザイン・同じ長さでも複数の木型が必要になるのです。
大量生産が前提の市場では、最も多くの人に売れるサイズ帯に生産を集中させることが合理的な判断です。結果として、レギュラーサイズ(おおむね22.5〜24.5cm)の一部の幅(ワイズ)だけが量産され、当てはまらない21cmや22cmの小さいサイズや、26cm・27cmなどの大きいサイズは切り捨てられることになりやすいのです。
Summary:靴のサイズ展開が少ない根本的な理由は、サイズごとに木型が必要という製造上の制約にあります。コスト効率を優先する大量生産市場では、レギュラーサイズ以外が切り捨てられます。
「幅(ワイズ)展開」が少ない理由
足幅(ワイズ)の展開が特に少ない背景には、木型コスト以上に複雑な製造上の難しさがあります。
足の長さが1cm違うだけでも木型は別物ですが、幅(ワイズ)が変わると靴の構造はさらに変わります。足長のサイズ展開だけでなく、幅狭〜幅広の木型に合わせてアッパー(靴の甲の部分)の型紙を引き直す必要があり、底材との接合バランスも調整が必要になります。サイズアップのような単純な拡大縮小では対応できない、専門的な設計変更が求められます。
さらに、幅やサイズが変わると素材の取り量・縫製の工程・完成後の品質確認まで、製造ラインのあらゆる工程に影響が出ます。 靴の製造は、アッパーの裁断・縫製・底付け・仕上げと多くの工程を経るため、幅の展開を一つ増やすだけで管理すべき工程数が大きく増加します。
これが、「幅広の靴はデザインが少ない」「細身の靴を見つけられない」「気に入ったデザインが自分を幅(ワイズ)では展開されていない」という現実を生む理由です。幅の展開を持つこと自体が、靴の製造においては相応なコミットメントを必要とする取り組みなのです。
Summary:幅(ワイズ)の展開が少ない背景には、木型・型紙・底材・縫製・品質管理と、製造のあらゆる工程への影響があります。幅展開を持つことは、製造者に技術的・コスト的コミットメントを伴います。
サイズが「ある」だけでは不十分な理由
「長さだけ合わせた靴」の問題
イレギュラーサイズの靴がラインナップされていても、そのサイズに最適化された木型で作られているとは限りません。
市場にある21cmや28cmの靴の多くが、レギュラーサイズ用の木型を機械的に縮小・拡大して作られたものがほとんどです。この場合、足の長さは合っているようにみえても、足幅(ワイズ)・甲の高さ・かかとのカップの比率が、そのサイズの足型とは合っていないことがあります。
「サイズはあるのに、なんか合わない」「どこかが余る」「なぜか痛い」
という体験は、こうした「長さだけ合わせた靴」を履いているときに起きやすいものです。サイズが存在することと、そのサイズの足に本当に合う靴であることは、全く別の問題です。
品質・機能面での格差
サイズ展開の少なさは、品質・機能の格差にもつながっています。
レギュラーサイズでは適度なクッション性・アーチサポート・かかとのホールド機能など品質の高い靴を選ぶことができます。しかしイレギュラーサイズの靴で「履けるサイズがあるだけありがたい」という意識が生まれてしまい、機能にまで目を配って靴選びをできていないケースも見受けられます。
Summary:イレギュラーサイズの靴が存在しても、そのサイズ専用に設計された木型で作られているとは限りません。長さだけを合わせた靴は、幅・甲・かかとなど他の要素でフィットせず、痛みや疲れの原因になります。
「サイズを選べない」構造が、足の健康に与えている影響
サイズ展開が少ないから合わない靴を履き続ける」ことの弊害
選択肢がなければ、妥協するしかありません。少しきつくても、少しゆるくても、「これしかないから」と履き続ける。その積み重ねが、外反母趾・内反小趾・タコ・扁平足といった足のトラブルを引き起こし、さらには歩行の癖・姿勢の歪み・腰痛など全身への影響へと連鎖していく方が多くいます。
「足に合う靴を選ぶ」という行為が、日本ではまだ十分には文化として根づいていません。その背景のひとつに、そもそも「選べる靴」が市場に少なかったという事実があります。消費者の意識の問題ではなく、供給側の構造が選択の機会を奪ってきたという視点は、重要だと私たちは考えています。
Summary:靴のサイズ展開の少なさは、合わない靴を履き続けることを余儀なくし、足トラブル・姿勢の崩れ・全身への影響へとつながります。「選べない」のは消費者の問題ではなく、供給側の構造的な問題です。
キッドが、「サイズ選び」という壁に向き合い続ける理由
キッドがイレギュラーサイズの展開にこだわり続けるのは、製造の難しさを知っているからこそです。
木型のコスト、設計の複雑さ、品質管理の難しさ──これらは、60年以上この業界に関わってきたキッドが、誰より深く理解していることでもあります。だからこそ、それを乗り越えてサイズ展開を持つことの意味も、痛いほどわかっています。
国内最大級のイレギュラーサイズの品揃えは、1人の小さいサイズの足のお客様の声に応えることから始まりました。「難しいから」という理由だけで諦めなかった積み重ねの結果でもあります。
そしてそれぞれの靴は、そのサイズの足型に合わせた木型から作られています。長さだけを合わせた靴ではなく、そのサイズの足に本当にフィットする靴を届けることが、キッドの変わらない姿勢です。
「おしゃれと健康を、すべての足に。」──この言葉は、製造の壁があることを知ったうえで、それでも「ジャストフィットの靴」をお届けしたいという意思の表れです。
Summary:キッドがイレギュラーサイズの展開を持ち続けるのは、製造の難しさを知りながらも、すべての足に本当に合う靴を届けたいという意思からです。それぞれのサイズや足の特徴に適した靴をお届けしたいという気持ちで、靴の販売とカウンセリングを行っています。
「サイズが選べる」を当たり前に
木型のコスト、製造工程の複雑さ、大量生産の論理──こうした構造的な問題が、「ピッタリサイズの靴を選ぶ」という体験を難しくしてきました。
でも、その構造は変えられます。選択肢を増やすことができる専門店がある。本当に合う靴を届けることができる技術がある。
私たちは、ピッタリサイズの靴選びを諦めなくていいということを、もっと多くの方に知ってほしいと思っています。
イレギュラーサイズのラインナップを豊富に揃えた専門店へ、ぜひご来店ください。
よくあるご質問
Q. 小さいサイズ・大きいサイズでも、デザインが選べる靴はありますか?
キッドでは、21cm・22cmの小さいサイズや、25cm・26cmの大きいサイズを含む、19cm〜27cmのイレギュラーサイズをECサイト(小さいサイズ・大きいサイズ専門)と池袋の店舗で販売しています。デザインやカラーのバリエーションも豊富で、300種類以上を準備しています。
Q. 幅(ワイズ)展開のある靴を探しています。どこで見つけられますか?
幅(ワイズ)展開を持つ婦人靴は市場に少ないのが現状です。キッドでは足幅(ワイズ)に対応したモデルを展開しており、特にオーダーパンプスi/288は幅広・幅狭どちらにも対応可能です。まずは来店のうえ足型を計測し、あなたの足に合った幅のご提案を受けることをおすすめします。
▶︎婦人靴専門店オンラインショップで、各種サイズ・形状を取り揃えています。
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